『テロリスト群像』遅々と読む

サヴィンコフ『テロリスト群像』(岩波現代文庫)をゆっくりゆっくり読んでいる。
学芸大学駅近くの古書店で上下巻1000円を衝動買いしてしまったあとで、アマゾンで二束三文で売られているのを発見すると地団太を踏む思いだ。
しかしねえ、テロへのこのなみなみならぬ情熱というのは、いったい……。
電話が大金持ちたちの間でようやく普及し始めた100年前のロシア。
鬱勃たる情念に突き動かされ、死を覚悟しながら、パリからペテルブルクまでを苦労しつつも縦横に行き来する亡霊のような人々の物語は、なかなか先へ読み進められない。
『小説 大逆事件』(文春文庫/佐木隆三)の醸し出す雰囲気と明らかに違うのは、大逆事件が冤罪であり、サヴィンコフが確信犯であるからだろう。
そこで、次のような一文に行き当たった。
「人々には欠点はなくまたあり得ないということを示している、と話した。」(p216、14行)
原文にあたることなく言いがかりをつけるなら、「人々に欠点がないなどということはあり得ない」ではないかという疑念を持つ。
前後の文脈が、自分たちの党派から分離独立していった人々にまつわる記述なので、その思いはよりつのる。
翻訳って難しい。原文を読んでもいない素人が言いがかりをつけてきたりもする。
何とも。