ブータンで何か考えたか

akrh2006-11-02

ブータンから帰って2週間。
写真など見ながらブータンのことを思い起こす夜もある。
まったくのオフに自腹でこんなにお金がかかる国(法定で1日200ドルかかる)を旅することになったのは、やはり興味があるからだ。一度行っておけば、幻想ももたずにすむ。無責任な幻想をいだき、それを勝手に嵩じさせた挙げ句に幻滅する愚をおかしたくなかったのだ。
当地で何か考えたかというと、タイやインド、中国やキューバなど、さまざまな国での考えさせられ方とくらべると、いたって考えさせられなかったというべきだろう。
発展途上国を旅すると、貧富の差や搾取と収奪の構造がいやでも目に飛び込んできて、最後にはいっぱしのマルクス主義者になって脳ミソが筋肉痛でヘトヘト、というのが常なのだが、今回はそういうストレスがない。
そもそも人々のストレスがツーリストに向かってくるということがない。これは本当にない。
乞食がいないし、観光客に媚びる職業というものがない。
辺境であるからにはツーリストという存在は珍しいわけであるが、あらゆる国でそうであったようにはじろじろ見られない。
ガイドと運転手というのが付くことになっている(法定料金に含まれる)が、仏教徒らしくとても謙虚でセンシティブ。しかも監視や管理の匂いもしない。
彼らのバックボーンに個人主義というのがあるのかどうかはわからないが。
日本人観光客は米国人(英語が通じるのでね)に次いで多いが、いたって礼儀正しく、穏便に過ごしていて、日本について考えさせられるということもない。
したがって、旅行ストレスというのが皆無なのである。
ひとり旅であるからには、もう少し精神的なアップダウンがあってもいいんだけど、とにかくガイドさんにつれられて、運転手さんに運ばれていくうちに、日々が過ぎていく。
癒されるという気も起こらないうちに、だらけていく。
こんな国もあるんだね。
チップ不要国と「地球の歩き方」には書いてあった気がするが、ガイドさんは「満足したらチップをあげて下さい。サービスの向上につながります」といって、それは最後は自分にもくれということかと思わされたのが唯一の疑念だろうか。風の何とかという日本の旅行社のパンフにはガイドへのチップは1グループ1日5ドルが適当と明記されているという。それはつまり、ひとり旅の僕には負担が大きい。
随分前にチップ解禁に踏み切ったキューバでは、今ではチップなしでは何らのサービスも受けられなくなっている。
なるようにしか、ならないのだ。ブータンも。