柴田元幸はすごい

akrh2006-10-29

『ムーン・パレス』(ポール・オースター)をまだ読んでいるわけであるが、訳者の柴田元幸という人はすごい人だ。
文中に、「清水の舞台から飛び下りるつもりで」という訳を見たときに、僕はそう思った。
翻訳の授業では、日本の格言やことわざを訳文に紛れ込ませるのが適切かどうかというのを必ず議論するらしいが、たいていの読者はそこでヒくのであまり使わない方が…、という論者の方が多数派だという。
それが、キヨミズときた。
ヒいたというのでもないかもしれないが、確かに僕もこの一行に出会ったとき、アメリカにキヨミズないじゃん、と唖然としたのだった。呆然としたのである。
これがセンセイ一流の茶目っ気なのか確信に満ちた犯行なのかはわからない。
しかし、こういう一文を発見すると、俄然読み進む楽しみが増すのも事実なのであった。